聖地シャンバラ伝説
天宮光啓「チベット回想録」
昔、チベットでラマ僧から「シャンバラ」に関する伝説を教えてもらった。
最近、それにまつわる夢をまたよくみるようになった。
シャンバラとは、ヒマラヤ山脈周辺諸国やチベットなどで語り継がれている伝説的な聖地である。
シャンバラに関する伝説や信仰は、仏教をはじめヒンドゥー教やボン教など、さまざまな宗教や哲学的な伝統の中に今も息づいている。
いわば人類が繁栄と調和の中で安らかに暮らせる理想的な社会、桃源郷、また俗界を離れた仙境を象徴する。
伝説によれば、シャンバラは高い山々に囲まれた豊かな緑に覆われた秘境に存在し、永遠の平和と幸福が実現すると信じられている。
シャンバラには、現在の人工知能をはるかに上回る高度に発達した霊的な知識や智慧が蓄積されているともされる。
こうしたシャンバラの伝説は、19世紀のイギリスの探検家やチベットの学者や僧侶たちによって西洋に紹介された。
一部の人々はシャンバラを現実の世界だと信じ、探検や探索の対象として取り組んできた。
しかし、シャンバラの正確な場所や存在については明確な証拠や確たる情報はいまだない。
ただ、ひとつだけ言えることがあるとすれば、それはシャンバラが私たち人類にとっての最後の砦、夢や希望といった「究極の幸福」であるということだ。
換言すれば、シャンバラとは私たちの心の中に最初から存在している誰もが仏になれる「仏性」のことなのかもしれない。
チベットで出会ったあのラマ僧が、微笑みを少し浮かべながら瞑想している姿を今もよく思い出す。
合掌 天宮光啓
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