母がこの世を旅立ち、10回目の夏を迎えた。
当時、ヘアドネーションのために髪を伸ばしていた。
入院先には同じ病気で苦しむ人々が、
幼い子供たちの姿もあった。
四苦八苦、この世には様々な苦しみがある。
何とかして病気を治してあげたい──
気がつけば遍路に出かけていた。
ただ、ただ、歩いた。
晴れの日も、雨の日も風の日も。
来る日も来る日も。
遠くの方に最後のお寺の山門が見えた瞬間、
足が止まり、大粒の涙が頬を伝った。
しばらく何も見えなくなった。
夏がくれば思い出す。
子供の頃に病気をして心細かったときに、
母が夜通し看病してくれたことを。
ありがとう
合掌 天宮光啓