真の幸せは自己のみならず他者とのつながりから生まれる
今回は「自利利他(じりりた)」についてお話しします。
「自利利他」とは、自分だけの利益を追求することではなく、他者の幸福や利益も考慮する心のあり方をいいます。
この教えには深い智慧と喜びが込められており、まさに心が豊かになる人生の源泉といえます。
仏教では、自分自身を大切にし、幸福になることが重要視されます。
つまり、心身を健全に保つことは自己成長を遂げるための基盤です。
しかしそれだけでは不十分です。
なぜなら、真の幸せは自己のみならず他者とのつながりから生まれるからです。
自利利他の教えは、自分の幸福を求めるだけでなく、他者の幸福を願う心を大切にすることです。
他者に対する思いやりと助け合いの精神を持つことで、人間関係が深まり、共感と理解に満ちた社会が築かれます。
もう十年近く前のことです。
長い闘病生活の末に亡くなった母の菩提を弔うために歩き遍路に出ました。
四国遍路には、「同行二人」という言葉があります。
言葉の意味は、”いつもお大師様と一緒”です。
ですが、お互いの旅の無事を祈るという深い意味を教わりました。
ひと昔前の旅とは、現代の旅行とは違ったものでした。
けがや病気、事故や犯罪などに巻き込まれ、命を落とすこともありました。
ですから、旅の道中での出会いは「一期一会」、とてもかけがえのないものでした。
自己の利益だけを追求するといつしか孤立し、心に本当の満足と充実を感じることが難しくなります。
しかし、他者の利益を考えることで、心の中に温かさと喜び、勇気や希望が自然に湧いてきます。
自利利他の実践は、日常生活の中でもさまざまな形でおこなえます。
例えば、周囲の人々に対して感謝の気持ちを示すことや、困難な状況にある人を支援すること、笑顔や親切な言葉を分け与えることなどが挙げられます。
小さな行為でも、他者の心に温かい光を届けることができるのです。
自利利他の心は、人々の絆を強くし、喜びや感動を分かち合う素晴らしい力を秘めています。
日々の生活の中で、自己と他者を大切にし、共に輝く心を育てていきたいものですね。
そうすることで、幸福の源が永遠に満ちることでしょう。
自利利他の素晴らしさを感じながら、ぜひこの教えを日常生活に取り入れてみてください。
きっとみなさん自身と周りの人々が豊かな愛と幸せに包まれます。
私たちは、けっしてひとりではない。
南無大師返上金剛
合掌 天宮光啓